2022年2月4日に公開された映画『大怪獣のあとしまつ』は、日本の特撮映画史に残る大炎上を引き起こしました。Hey! Say! JUMPの山田涼介が主演し、土屋太鳳がヒロインを務め、『時効警察』シリーズで知られる三木聡監督が脚本・監督を担当したこの作品は、映画史上前例のないテーマ—怪獣が死んだ後の死体処理—を扱った意欲作として期待されていました。
しかし、公開初日から予想を超える批判が殺到。SNS上では「令和のデビルマン」などと呼ばれ、映画評論家からも「世界ダメ映画選手権があったら、これに勝てるものはない」との酷評を受けるほどでした。制作費20億円をかけたにもかかわらず、観客の期待を大きく裏切る結果となりました。
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炎上の原因:観客の期待と作品内容のミスマッチ
映画『大怪獣のあとしまつ』の炎上は、観客の期待と実際の作品内容の決定的なミスマッチから始まりました。多くの観客は2016年公開の『シン・ゴジラ』のような真面目な怪獣映画の後日談を期待していましたが、実際の内容は三木監督特有のシュールで不条理なユーモアと下ネタ満載のコメディでした。
映画評論家の前田有一氏は、「テーマには素晴らしい着眼点があったものの、映画としての完成度が著しく低かった」と指摘しています。特に映画のラストシーンは、多くの観客を唖然とさせる展開となり、劇場での反応は氷のように冷たいものでした。
あるブロガーは鑑賞後の劇場の様子をこう描写しています:「スタッフロール後にオマケ映像が流れる事で有名なマーベル映画でさえ何人かの観客は席を立つのに、『大怪獣のあとしまつ』はそのラストが意味不明かつクソすぎて誰一人それを即座に受け入れる事ができなかった」
プロデューサーの言い訳が炎上に油を注ぐ
映画の不評を受け、オリコンニュースのインタビューで企画・プロデュースの須藤泰司氏とプロデューサーの中居雄太氏が発言した内容が、さらなる炎上を招きました。
須藤プロデューサーは次のように語りました: 「ラストの巨大ヒーローが全てを解決するというオチ、これは結局、『神風が吹かないと解決しない』という、ごく単純な政治風刺なのですが、これがほとんど通じておらず驚きました。」
また、最後にはこう締めくくりました: 「かのヒッチコック監督が、演出に対する不満をぶつけてくるイングリット・バーグマンに言った言葉が好きです。『たかが映画じゃないか』。本作に対する真の評価はこれからだと考えております。」
この発言は観客の理解力不足を示唆し、批判を一蹴するような姿勢と受け取られ、新たな炎上を引き起こしました。インターネット上では「観客のせいにするな」「言い訳をするな」という批判が殺到しました。

三木聡監督の反応とファンの声
興味深いことに、三木聡監督本人はプロデューサーのような言い訳はせず、むしろ作品への反応を受け止める姿勢を見せました。舞台挨拶で山田涼介が「俺、あれ見て笑っちゃいました。うそーん!って(笑)」と述べると、三木監督は「良いも悪いもこんなにリアクションがあったのは初めて。皆さんの気持ちを激しく動かせたことに、ちょっとうれしさもありました」と語りました。
三木監督のファンからは、「三木聡監督の映画は常にシュールで不条理。それを知った上で見る必要があった」という擁護の声もありました。また、映画評論家の切通理作氏のように、冷静な批評を行う専門家もいましたが、大多数の観客や批評家からの評価は厳しいものでした。
企業の危機対応から学ぶ教訓
『大怪獣のあとしまつ』の炎上とその後の対応は、企業の危機管理における重要な教訓を提供しています。
- 顧客(観客)のせいにしない:プロデューサーが「理解されなかった」と観客の理解力不足を示唆したことは、危機対応の大きな失敗でした。顧客満足は主観的なものであり、商品やサービスが期待に応えられなかった場合、提供側に責任があることを認めるべきです。
- 謙虚さを持つ:「本作に対する真の評価はこれから」という発言は、現在の批判を軽視しているように聞こえ、謙虚さに欠ける印象を与えました。
- 批判を真摯に受け止める:建設的批判は改善の機会です。批判を無視したり、軽視したりするのではなく、次の作品に活かす姿勢を示すことが重要です。
まとめ:言い訳より謙虚さが信頼を回復する
映画『大怪獣のあとしまつ』の事例は、創作者と観客の期待のミスマッチ、そして批判への対応の難しさを浮き彫りにしています。映画製作というクリエイティブな分野でも、最終的には「顧客満足」が重要であることを示す教訓となりました。
三木聡監督は『時効警察』シリーズなど、独特のユーモアセンスと世界観で多くのファンを魅了してきた実力者です。しかし、その個性的な作風が大規模な商業映画プロジェクトとマッチしなかったという分析もあります。
最終的に、作品が批判を受けた際には言い訳よりも謙虚さが重要です。自分の作品への愛情と同時に、観客の声に耳を傾ける姿勢こそが、長期的な信頼関係を構築する鍵となるでしょう。