プラン9・フロム・アウター・スペースのネタバレ解説!史上最低の映画と称される伝説の作品の全貌

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「史上最低の映画」と呼ばれながらも、半世紀以上にわたり世界中の映画ファンを魅了し続ける伝説の作品『プラン9・フロム・アウター・スペース』。エド・ウッド監督による1959年のこのB級SF映画は、あまりにもお粗末な特殊効果、とちりとちりの演技、支離滅裂なストーリーにも関わらず、今なおカルト的人気を誇っています。

本記事では、この伝説の映画のあらすじからネタバレ、製作秘話、そしてなぜ「最低」と言われながらも愛され続けるのかを徹底解説します。予言者クリズウェルの言葉を借りれば、「あなたはこの衝撃の真実に耐えられますか?」

目次

プラン9・フロム・アウター・スペース:作品概要と制作背景

『プラン9・フロム・アウター・スペース』は、1959年にエド・ウッド監督によって製作されたSFホラー映画です。当初は”Grave Robbers from Outer Space”(外宇宙からの墓荒らし)というタイトルで製作が始まりました。

エド・ウッド監督

エド・ウッド監督は、B級映画を多数製作した人物で、その独特の世界観と低予算ながらの情熱的な作品づくりで知られています。彼の半生は後にティム・バートン監督によって『エド・ウッド』(1994年)として映画化され、ジョニー・デップが演じたことでも有名です。

『プラン9』の製作費はわずか6万ドル。当時でも極めて低予算の映画でした。資金調達のため、エド・ウッドはバプテスト教会からの出資を受け、cast全員に教会への帰依を求めたとも言われています。

上映時間は79分と短めですが、その短さの中に驚くほど多くの矛盾や奇妙な展開が詰まっています。監督自身が「最高傑作」と豪語したこの映画は、皮肉にも「史上最低の映画」として後世に名を残すことになります。

プラン9・フロム・アウター・スペースのあらすじと登場人物

物語の始まり

クリズウェルの予言シーン

映画はインチキ霊能者のクリズウェル(本人演じる)が、カメラ目線で観客に「これから見る恐ろしい物語は真実である」と語りかけるシーンから始まります。彼は「あなたはこの衝撃の真実に本当に耐えられるでしょうか!?」と観客を煽り、得意げな笑みを浮かべながら闇に消えていきます。

主な登場人物

パイロット:ジェフ・トレント(グレゴリー・ウォルコット) アメリカン・フライト812の機長。UFOとの遭遇を機に物語に巻き込まれていきます。

ジェフの妻:ポーラ・トレント(モナ・マッキノン) 墓地近くに住むジェフの妻。彼女もまたゾンビたちに襲われることになります。

老人(ベラ・ルゴシ) 妻を亡くした謎の老人。彼自身も(おそらく)交通事故で死亡してしまいます。

老人の妻(ヴァンパイラ) 最初に墓から蘇るゾンビのひとり。

警部:ダニエル・クレイ(トー・ジョンソン) 墓地で起きる怪死事件を調査していた警察官。彼もゾンビ化してしまいます。

宇宙人エロス(ダドリー・マンラブ) 地球を訪れた宇宙人。「第9計画」の実行者です。

宇宙人タンナ(ジョアンナ・リー) エロスの女性パートナー。

宇宙皇帝(ジョン・ブリッケンリッジ) 宇宙人たちの支配者。彼の命令で「第9計画」が実行されます。

物語の展開

UFOシーン

宇宙の皇帝の命令で人類に戦争をやめるよう忠告しに地球を訪れた宇宙人たちは、彼らの存在すら認めない米国政府の態度にいら立ちを覚え、ついに「第9計画」を実行します。その計画とは、墓場から死者をよみがえらせてゾンビにし、人間たちを驚かせることで自分たちの存在をアピールするというものでした。

まず一人の女性(ヴァンパイラ演じる)が墓地から甦り、次に彼女の夫(ベラ・ルゴシ演じる)も死亡して墓地に埋葬されるとゾンビ化します。この二人はやがて調査に来た警察官ダニエル・クレイ(トー・ジョンソン)も殺してゾンビにしてしまいます。

墓地の近くに住むパイロットのジェフ・トレントは、フライト中にUFOを何度か目撃しており、墓地での奇妙な出来事とUFOとの関連性を疑い始めます。ジェフの妻ポーラもゾンビたちに襲われますが、何とか逃げ切ります。

ゾンビたち

プラン9・フロム・アウター・スペースの衝撃のクライマックス

太陽爆弾の謎

物語の中盤、宇宙皇帝は地球人が将来「太陽爆弾」を作り出すことを危惧していると説明します。ジェフたちが「太陽爆弾とは何か?」と尋ねると、皇帝は荒唐無稽な説明を始めます。

「ガソリン缶だ。つまりガソリン缶を太陽と考える。そこから細い線が地球に延びている。そこを伝わるガソリンが太陽光の粒子だ。地球は太陽光というガソリンで充満している。そこに点火すれば炎は一瞬で地球を周り、線を伝わって、缶、つまり太陽に燃え広がる。やがてその爆発は太陽光の届くすべての場所に拡大する。全宇宙が消滅するのだ!」

この説明を聞いた警部は思わず「こいつバカか?」と漏らします。

最終対決

宇宙船内での対決

クライマックスでは、ジェフたち地球人が宇宙人の基地に乗り込み、皇帝と対決します。どこか子供っぽい口喧嘩が始まり、機長が「太陽爆弾を作ればより強大な国になれるじゃないか」と発言すると、皇帝は「強大? ほら見ろ、愚か者め!」と反応します。

皇帝「愚か者。バーカ!」 機長「バカは貴様だ、まぬけ野郎!」

この口論の最中、皇帝と機長が揉み合いになり、皇帝が船内の特殊機器を投げつけたことでカーテンに引火。機長たちが脱出したあと宇宙船は爆発し、物語は終わります。

最後に再びクリズウェルが出てきて「皆さん! いま見たことはすべて事実です!事実じゃないと証明できますか!?」と観客に訴えかけ、映画は幕を閉じます。

プラン9・フロム・アウター・スペースの製作裏話

ベラ・ルゴシの悲劇

ベラ・ルゴシ

本作の最大の特徴のひとつは、元祖ドラキュラ俳優として知られるベラ・ルゴシの出演です。しかし、悲劇的なことに、ルゴシは製作開始からわずか2週間で死去してしまいます。

そのため、本編ではルゴシの出演シーンを何度も使い回したり、代役が顔をマントで隠しながら演じるという苦肉の策がとられています。この代役はエド・ウッドの妻の歯医者だったというエピソードも残されています。

結果として、この映画はベラ・ルゴシの遺作となりました。ティム・バートンの『エド・ウッド』でベラ・ルゴシを演じたマーティン・ランドーは、この役でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。

驚くべき特殊効果とセット

UFO特殊効果

『プラン9』の特殊効果とセットの質の低さは伝説的です。その代表例をいくつか紹介します:

  1. 空飛ぶ円盤: 明らかに車のホイールをぶら下げただけのUFO。糸で吊るしている様子が丸見えです。
  2. 段ボールの墓石: 墓地のセットに使われた墓石は薄っぺらな段ボール製で、俳優が地面に倒れた衝撃で跳ねるシーンもあります。
  3. 宇宙船の内装: 宇宙船内部のセットはカーテンと机しかないという究極の簡素さです。
  4. 電気銃: 宇宙人がゾンビを制御するための電気銃は、銃口をぐりぐり押し当てるだけという非常にシンプルな仕様です。これは特殊効果の予算を節約するための苦肉の策だったと言われています。

また、撮影セットが限られていたため、登場人物の移動シーンはほとんどなく、キャストがセットの真ん中に突っ立った状態でセリフを喋り続けるという独特の場面構成になっています。

プラン9・フロム・アウター・スペースの評価と影響

「最低映画」としての評価

映画のワンシーン

『プラン9』は当初、あまりにも酷い内容だったため上映権の買い手がつかず、テレビ局に権利を安く買いたたかれることとなりました。しかし、皮肉なことに、そのお粗末さがやがてカルト的人気を生み出すきっかけになります。

1980年に出版された『ゴールデン・ターキー・アワード』という本の中で「史上最低の映画」として紹介され、そこから徐々にカルト的人気を確立していきました。

なぜ愛されるのか

興味深いことに、『プラン9』は「最低」と言われながらも、多くの映画ファンに愛されています。その理由としては以下が考えられます:

  1. 純粋な熱意: エド・ウッドの情熱がどこか伝わってくることが共感を呼んでいます。
  2. 意図しないコメディ要素: 真面目に作られたはずのシーンが、その稚拙さゆえにコメディとして楽しめるという皮肉な魅力があります。
  3. ツッコミどころの宝庫: 矛盾点や視覚効果の不自然さに対して、視聴者がツッコミを入れながら楽しむという視聴スタイルが確立されました。
  4. 時代を超えた独自性: あまりにも特異な世界観は、むしろ現代のCG満載の映画にはない独特の魅力を放っています。

後世への影響

『プラン9』は現代のポップカルチャーにも影響を与え続けています:

  • ティム・バートン監督の映画『エド・ウッド』(1994年)で注目を集め、エド・ウッド自身の再評価にもつながりました。
  • ベル研究所が開発したオペレーティングシステム「Plan 9 from Bell Labs」は、この映画にちなんで命名されています。
  • 日本のお笑いユニット「ザ・プラン9」の名前の由来にもなっています。

プラン9・フロム・アウター・スペースの楽しみ方

映画のパッケージ

『プラン9』を最大限に楽しむためのいくつかのアプローチを紹介します:

1. 批評的視聴

映画の各シーンの矛盾点や視覚効果の粗さを探し、その創造性を楽しむ視聴法です。例えば:

  • 墓石が跳ねるシーンを見つける
  • 同じ宇宙船の映像が繰り返し使われていることを確認する
  • ベラ・ルゴシと代役の違いを見分ける

2. パーティー鑑賞

友人たちと一緒に視聴し、各自が気づいた面白いポイントを共有しながら楽しむ方法です。実際に「プラン9ウォッチパーティー」として開催される映画ファンのイベントも存在します。

3. ティム・バートンの『エド・ウッド』と併せて観る

『プラン9』を観た後に『エド・ウッド』を観ることで、エド・ウッド監督の人間性や情熱、そして映画制作の裏話を知ることができ、作品の理解がさらに深まります。

プラン9・フロム・アウター・スペースの名言とセリフ集

『プラン9』には、その稚拙さゆえに名言となったセリフがいくつか存在します。

クリズウェルの予言

クリズウェルの予言

「あなたはこの衝撃の真実に本当に耐えられますか!?」 「事実じゃないと証明できますか!?」

太陽爆弾の説明

「ガソリン缶だ。つまりガソリン缶を太陽と考える。そこから細い線が地球に延びている。そこを伝わるガソリンが太陽光の粒子だ。地球は太陽光というガソリンで充満している。そこに点火すれば炎は一瞬で地球を周り、線を伝わって、缶、つまり太陽に燃え広がる。やがてその爆発は太陽光の届くすべての場所に拡大する。全宇宙が消滅するのだ!」

電気銃のトラブル

「詰まってるわ!」 「落としたら直ったみたい」

ゾンビ退治作戦

「こっそり近づいて後ろから頭をブッ叩く」

プラン9・フロム・アウター・スペースの日本での評価と上映

『プラン9』は日本でも一定の評価を得ており、カルト映画ファンの間で愛されています。日本での公開は1995年と遅かったものの、その後も劇場での特集上映などが行われています。

カラーバージョン

2020年には、デジタル・カラライズドによる「総天然色版」が新宿シネマカリテで開催された特集上映企画「サイテー映画の大逆襲2020!」で上映されました。これは本来モノクロで撮影された映画に色付けを施したバージョンです。

日本の映画ファンからの評価は概ね以下の通りです:

  • 「真面目に観るべき映画ではないが、その独自の世界観は面白い」
  • 「意図せずコメディとなってしまった傑作」
  • 「観察力トレーニングのための教材としても利用価値がある」
  • 「エド・ウッドの映画への情熱が伝わってくる」

プラン9・フロム・アウター・スペース ネタバレ:最低映画の見分け方

『プラン9』のような「最低映画」の特徴をまとめてみましょう:

要素特徴『プラン9』での例
脚本矛盾点や論理の飛躍が多い太陽爆弾の説明など
演技ぎこちなく、棒読みが目立つほぼすべてのキャスト
特殊効果安っぽく、明らかに偽物と分かる糸で吊るされたUFO
セット簡素で安っぽい段ボールの墓石、カーテンだけの宇宙船
編集唐突なカットやジャンプが多い場面転換の不自然さ
音楽場面に合わない、過剰な使用緊張感のないBGM
一貫性設定やプロットの一貫性がないゾンビの動きや能力の変化

プラン9・フロム・アウター・スペースのFAQ

Q1: なぜ「プラン9」というタイトルなのですか?

A: 「プラン9」とは宇宙人が劇中で実行する作戦を指します。映画内では「第9計画」と呼ばれ、死者をよみがえらせて人間を驚かせ、自分たちの存在をアピールするという作戦です。なぜ「9」なのかは明確に説明されていません。

Q2: エド・ウッドはこの映画の評価をどう思っていましたか?

A: エド・ウッド本人はこの映画を彼の「最高傑作」だと考えていたようです。残念ながら彼はこの映画が「史上最低の映画」として評価される前に1978年に亡くなりました。

Q3: この映画のDVDやBlu-rayは入手できますか?

A: はい、日本でも「新訳版」や「総天然色版」としてDVDやBlu-rayが販売されています。またネット配信サービスでも視聴可能です。

Q4: 『エド・ウッド』という映画とは何ですか?

A: 『エド・ウッド』は1994年にティム・バートンが監督した伝記映画で、エド・ウッド監督の人生と『プラン9』の制作過程を描いています。ジョニー・デップがエド・ウッドを演じ、マーティン・ランドーがベラ・ルゴシを演じています。

Q5: 「史上最低の映画」というレッテルは納得のいくものですか?

A: これは主観によります。確かに技術的な完成度は低いですが、その独特の魅力や監督の情熱を考えると、単純に「最低」と切り捨てるのは公平ではないという意見もあります。むしろ「愛すべき駄作」と表現する方が適切かもしれません。

プラン9・フロム・アウター・スペースは映画ヲタクから愛されている

エド・ウッド映画のポスター

『プラン9・フロム・アウター・スペース』は、その技術的な欠点にも関わらず、純粋な映画愛と熱意に溢れた作品です。エド・ウッドが限られた予算と技術の中で最大限に表現しようとした姿勢は、現代の映画人にも何かを伝えるものがあるのではないでしょうか。

「最低映画」という評価は、ある意味でこの映画の本当の価値を見逃しているのかもしれません。それは、映画作りに対する情熱、既成概念にとらわれない独創性、そして何よりも観る人を楽しませる力です。

『プラン9』の魅力は、完成度の高い映画とは違った次元で輝いています。それは「良い映画」でも「悪い映画」でもない、ただただ「唯一無二の映画」なのです。

もしまだ観たことがない方は、ぜひ一度その独特の世界観を体験してみてください。そして、もしティム・バートンの『エド・ウッド』も合わせて観ることができれば、この伝説の映画とその制作者に対する理解がさらに深まるでしょう。

最後に、クリズウェルの言葉をもう一度引用します。「事実じゃないと証明できますか!?」

エド・ウッド監督、あなたの作品は永遠に語り継がれていくでしょう。

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