サムライ・コップのネタバレ!1969年製作のカルト的珍作が今も語られる理由

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サムライ・コップ~おとぼけクン~ポスター

「サムライ・コップ~おとぼけクン~」は、1969年に製作されながらも7年間もの間お蔵入りとなり、1976年にようやく限定公開された異色の映画です。なぜこの作品がカルト的人気を持ち続け、今なお映画ファンの間で話題になるのか?本記事では、製作背景から複雑なストーリー、出演者の秘話までを徹底解説します。

サムライ・コップの基本情報と製作背景

映画「サムライ・コップ~おとぼけクン~」とは?

「サムライ・コップ~おとぼけクン~」(原題:Mastermind)は1969年に撮影され、1976年に限定公開されたコメディ映画です。ピーター・セラーズ主演の「暗闇でドッキリ」(1964)の成功に触発され、同作の脚本を担当したウィリアム・ピーター・ブラッティ(後の「エクソシスト」の原作者として有名)が脚本を執筆しました。しかし映画の出来があまりにも悪く、ブラッティは脚本のクレジットを「テレンス・クライン」という別名義に変更したという経緯があります。

サムライ・コップ~おとぼけクン~場面写真

7年間のお蔵入りの理由

1969年に製作されたにもかかわらず、この映画が1976年までお蔵入りとなった主な理由は、単純に作品の質の低さでした。チャーリー・チャンという中国系アメリカ人刑事の作品をパロディにしたコンセプトでしたが、時代錯誤的でステレオタイプな日本人表現や一貫性に欠けるストーリーラインなど、問題が山積みでした。最終的に限定公開されましたが、日本ではビデオリリースのみにとどまっています。

サムライ・コップの詳細なストーリー展開

前半:京都での事件発生

物語は京都を舞台に始まります。何者かが深夜の工場に侵入して警備員を毒殺し、金庫にある人型ロボットを盗む事件が発生します。しかし、盗まれたのはダミーで、本物の人型ロボット”シャッツィー”は別の金庫に保管されていました。

京都での事件現場

そこで、このシャッツィーが悪の手に渡らないよう警備担当に任命されたのが、ホク市原(ゼロ・モステル)です。彼は仕事部屋兼瞑想部屋に住んでいる自称サムライの日本人捜査官ですが、実際は外国人俳優が日本人を差別的にデフォルメしたメイクを施して演じています。

中盤:ロボット争奪戦とニッキとの関係

ホクは優秀な捜査官を自称していますが、ナイトクラブ「DRAGON CLUB」のオーナーであるニッキ(岸恵子)に片思いをしており、彼女に夢中になっています。ホクは自分が武士になって姫様のニッキを救うという妄想を常に抱いており、これが物語の随所にサイレント喜劇風のシーンとして挿入されます。

岸恵子演じるニッキ

この優秀なAI機能を搭載した小人型ロボット”シャッツィー”(小人症の俳優フェリックス・シラが演じる)をめぐって、謎の修行僧、アメリカ人エージェント(ブラッドフォード・ディルマン)、イスラエル人エージェントコンビなどが争奪戦を繰り広げることになります。

後半:カーチェイスと事件解決

物語はカーチェイスシーンなどを交えながら展開し、ホクは相棒(ピーター・セラーズに似たガウン・グレインジャー)と部下を従えてドタバタを繰り広げつつも、最終的に事件を解決します。映画の中には、キワモノ的なカーチェイスシーンがあり、工事で穴を掘っている人の上を車が通過するという危険なシーンも含まれています。

カーチェイスシーン

サムライ・コップの個性的なキャスト陣

ゼロ・モステル(ホク市原役)

1915年2月28日生まれのゼロ・モステルが、54歳頃に日本人捜査官役を演じました。メル・ブルックスの映画「プロデューサーズ」でジーン・ワイルダーと共演したことで知られる俳優です。本作では日本人をステレオタイプ化したメイクと演技で、所々で不可解な強さを発揮するコミカルな役どころを演じています。

ゼロ・モステル

岸恵子(ニッキ役)

当時37歳だった岸恵子がホクの片思いの相手であるナイトクラブオーナー・ニッキを演じています。スラっとしたスタイルでお色気を振りまき、入浴シーンやチラリズムのサービスカットも含まれています。また主人公の妄想シーンでは姫様として登場します。

岸恵子演じるニッキ

フランキー堺

映画内ではあまりストーリーに絡んでこない役どころですが、不甲斐ない捜査を恥じて何度も切腹しようとする警察官役を演じています。日本人俳優の中でも知名度の高いフランキー堺の起用は、海外向けに日本色を演出する意図があったと考えられます。

フェリックス・シラ(シャッツィー役)

小人症の俳優フェリックス・シラが人型ロボット”シャッツィー”を演じています。彼はスターウォーズシリーズのイウォークの一人としても知られ、2021年に84歳で他界しました。映画内では小柄な体型を活かしたロボット役を演じていますが、ビジュアル的にはオッサン風のロボットという奇妙な設定になっています。

フェリックス・シラ演じるシャッツィー

サムライ・コップの日本の描写と文化的側面

日本のステレオタイプ表現

本作は1960年代のハリウッド映画によく見られた、東洋に対するステレオタイプ的な見方が如実に表れています。ゼロ・モステルの演じるホク市原は、日本人を差別的にデフォルメしたメイクと演技で表現されており、現代の観点からは問題視される描写が多々含まれています。

京都のロケ地と日本趣味

映画には京都でのロケ撮影シーンがあり、当時の日本の風景が垣間見えます。また、ヘンテコな日本趣味の美術セットなども特徴的で、アメリカ側の持つ日本のイメージが投影されています。こうした「外国人の見た日本」という視点は、カルト映画としての一面を強めています。

日本ロケシーン

サムライ・コップの作品評価とカルト的位置づけ

B級映画としての魅力

本作は明らかなB級映画ですが、その稚拙さや時代錯誤的な表現がかえってカルト的人気を生み出しています。画面に登場する俳優の演技のちぐはぐさや、特撮効果の粗さなどが、ある種の「ダメさ加減」を醸し出しているのです。

現代の評価と視聴価値

現代の視点から見ると、この映画は当時の文化的バイアスや差別的表現の歴史的事例としての価値があります。また、岸恵子やフランキー堺といった日本を代表する俳優がハリウッド映画にどのように起用されていたかを知る貴重な資料でもあります。

映画ポスター

サムライ・コップのよくある質問

Q: この映画はどこで視聴できますか? A: 現在は一部のビデオコレクターやマニアの間で希少なビデオ作品として扱われており、一般的な配信サービスでは視聴困難です。

Q: 原題の「Mastermind」にはどんな意味があるのですか? A: 「黒幕」という意味があり、映画内のロボットの争奪戦の裏にいる黒幕を指していると考えられます。

Q: なぜこの映画は7年間も公開されなかったのですか? A: 作品の質の低さや時代にそぐわない表現などが理由で公開が見送られ続け、最終的に1976年に限定公開された経緯があります。

Q: 脚本家のウィリアム・ピーター・ブラッティはなぜ別名義を使ったのですか? A: 映画の出来に満足できず、自身の名前を出したくなかったためと言われています。後に「エクソシスト」などで有名になる彼にとって、このB級作品は恥ずかしい過去作だったのでしょう。

Q: フェリックス・シラはどのような俳優だったのですか? A: 小人症の俳優で、多くの映画やテレビドラマに出演しました。特にスターウォーズシリーズのイウォーク役や「アダムスファミリー」のイット従兄役などが知られています。2021年に84歳で他界しました。

まとめ

「サムライ・コップ~おとぼけクン~」は、1969年に製作されながらもお蔵入りとなり、1976年にようやく日の目を見たB級コメディ映画です。日本に対する固定観念や時代錯誤的な表現、多国籍キャスト、突飛なストーリー展開など、様々な意味で「珍作」と呼べる作品です。

しかし同時に、ゼロ・モステル、岸恵子、フランキー堺といった個性的な俳優陣や、「エクソシスト」原作者のウィリアム・ピーター・ブラッティが(別名義で)脚本を担当するなど、思わぬ豪華さも持ち合わせています。B級映画ファンや映画史に興味がある方には、一見の価値がある作品と言えるでしょう。

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